ここマレーシアでレースが開催されるのは2013年以来、12年ぶりだ。海外レースはコロナウイルス蔓延前の2019年にタイのブリーラムで行われたのを最後に、久しぶりの海外レースとなった。
マレーシアの過去のレースは最も暑い時間帯を避けて、15:00前後のスタートが多かったが、今回はスタート時間を更に遅らせ、16:30スタート、18:30にチェッカー予定のレースフォーマットとなった。
木曜から行われたフリー走行では、なかなか思うようにタイムが出なかった。一部では、サポートレースのタイヤのラバーが路面に残っていて、GT車両のタイヤとのマッチングが悪いという声も聞こえた。
それが原因であるかは定かではないが、#8 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTは後方に沈んでしまった。
予選日午前中に行われた2回目のフリー走行では、何とか4番手まで挽回する事が出来たが、予選で好位置につけるかどうかは未知数だった。
Q1は松下信治選手がアタックを行った。フリー走行での松下選手は思うようなタイムが出なくて、今回は不調なのかと誰もが考えたが、そのような不安要素を払拭し6番手のタイムを叩き出し、Q2の野尻智紀選手につないだ。
野尻選手はピットに少し待機してからコースインしたが、他車が軽微な火災を起こし赤旗中断となった。
幸いにも、タイヤに熱が入る前の赤旗だったので、タイヤは温存出来た。
予選が再開し、野尻選手は3周タイヤに熱を入れて4周目にアタックを行った。見事に1周をまとめて2番手のタイムを叩き出す事に成功した。
最前列からのスタートとなるので、決勝は上手くスタートを決めて、久しぶりのマレーシアで好結果を残したい。
「最初のフリー走行ではどうなるかと心配したけど、ドライバーとチームは帳尻を合わせてくれたね。トラブルやミスが無いように集中してレースを戦って行きます」
「タイヤの選択も良くて、Q1、Q2とも危なげなく走ってくれて、野尻選手もQ2で頑張ってくれて最前列のグリッドに並べる事になりました。レースペースも良さそうなので頑張ります」
「走り始めからテストとコンディションが違っていたので戸惑いましたが、そこからアジャスト出来て予選で上位に行けたので、前戦の借りを返せるように頑張りたいと思います」
「FP1に比べると良いランニングカーブを描けたかと思います。Q1は6番でQ2は2番だったので、勝たなきゃ意味はないとは思いますが、勝てる土台が出来ているので勝てるようにしっかりと準備していきたいと思います」
12年ぶりのマレーシア大会、海外戦は2019年のタイ大会から6年ぶりのレースとなった。
1月のウインターテストはここセパンで行われ、16号車の大津弘樹選手、佐藤蓮選手も参加した。
テストでは良い感触を得られていて、1回目のフリー走行の序盤で2番手のタイムを記録した大津選手は手応えを感じていた。
予選は決勝を見据えて、硬めのタイヤをチョイスして佐藤選手にQ1を託した。
路面コンディションが良くなる終盤にタイヤのグリップがピークに達するようなタイミングでコースに送り出したが、もう1周アタックに入ろうと思ったところでチェッカーフラッグが出て不完全なQ1となってしまい、Q2に進む事が出来なかった。
最後尾からのスタートとなるが、上位に食い込めるポテンシャルは十分に持っているので、決勝では追い上げを期待したい。
「Q1でコースに送り出すタイミングを見誤ったかも知れないけど、ピンポイントでタイムを出せそうなところを狙っていたと思うので誰も責める事が出来ない予選だったね。レースはうまく行けば応援してくれる皆が喜んでくれるようなポジションをゲット出来ると思うよ。この車とドライバー、チームの底力はあると思うので、決勝は楽しみにしていてください」
「速さがあるだけに悔しい結果になってしまったね。色々と予測が外れてしまったところがあったと思うけど、大事なのは決勝。レースはしっかり戦って、車やドライバーのポテンシャルを引き出せるように頑張ります」
「午前中は悪くなくて、選んだタイヤも午前中の走行でも使える手応えはありましたが、狙いすぎたのか、上手くタイヤを使いきれませんでした。明日は何とか挽回出来るように準備していきます」
「1月にここでテストを行えたので、走行データや車のバランスを理解したうえでここに入って来ました。しかし、その時とはコンディションが大きく違い、そこに合わせるのがとても難しかったです。タイヤの選択については、あまりポジティブではなくて、路温が下がって行く中で選択肢として硬めのタイヤしか無くて、Q2では良いパフォーマンスを出し切れず終わってしまいました。しかし、このタイヤは明日の決勝では戦闘力があると考えているので、切り替えて頑張りたいと思います」
「予選ではフリー走行とは違うスペックのタイヤで出走したのですが、思ったより作動せずにウォームアップラップが足りない状況で思うようなアタックが出来ず、車のポテンシャルを出し切る事が出来ませんでした。後方からのスタートではありますが、決勝のペースは悪く無いと思っているので、諦めずに上位を目指して行きたいと思います」
気温は31-32℃程でそれほど高くは無いが、湿度が高く体力を消耗しそうなコンディションだ。
ウォームアップではいつものように決勝のセットの確認を行った。ここでのタイムは速さの参考にはならないが、10番手でセッションを終えた。
スタートドライバーは松下信治選手。マレーシア国歌、日本国歌が流れ、フォーメーションラップのあとスタートが切られた。
松下選手はポジションをキープし、ホームストレートに戻ってきた。トップ車両のペースは良く、ピットからは無線でトップに離されないように指示が飛んだ。松下選手はトップに食らいつき周回を重ねる。
一時は2秒差をつけられていたが、300クラスの周回遅れが出始めた7周目にトップの背後まで迫り、8周目のヘアピンでトップのインを差しトップに躍り出た。ピットは大盛り上がりだった。そのあとは2番手と少しずつ離れ、 21周目にピットインを行い、野尻智紀選手に後半を託した。
7番手でコースに復帰したが、12コーナーで雨が降っていたようだ。雨雲は少なく、路面コンディションに影響は無さそうだが、雨の予報もあったので注意しながら走行を重ねた。
全ての車両がピットインした32周目で野尻選手の順位は2番手。アンダーカットされてしまったが、トップ車両の背後にピッタリと付けて様子をうかがう。時々300車両に行く手を阻まれてしまうが、1秒前後のマージンをキープしながらトップを追った。しかし、トップ車両のペースは速く、野尻選手は徐々に離されてしまう。
決して遅いペースではなかったが、トップ車両のレベルには届かなかった。最終的には2位でチェッカーを受ける事に成功した。第1-2戦で不本意な結果を残していたので、復活の狼煙となる事を期待したい。
「ノブがトップに立ってくれて、ちょっと期待しちゃったけど、優勝したチームの車は安定していたね。そこのレベルまで行って超えていかなければいけないけど、中盤戦に向けてしっかりと準備していきたいね」
「予選前は調子が悪かったんだけど、予選から挽回してくれて2番手を獲ってくれました。決勝はトップのペースには追いつかなかったけど、ノブも野尻もトップ争いをしてくれて、ようやくここに戻ってくれたと思っています。今回は2位でしたが、次回以降は選手権の主導権を握れるように頑張りたいね」
「ノブは安定して速かったですし、トップで野尻に渡せたのは良かったと思っています。しかし、トップの車両は速かっただけではなく、ピット作業も速かったので前に出る条件が揃っていたものの、我々もスピードはありましたし、ピット作業も決してミスをしたわけではないので、悔しいという気持ちが強いです」
「松下選手からトップで繋いでもらったのですが、あれ以上ペースを上げるのが難しかったというのと、トップ車両のピット作業はとても速かったというのもあり、前に出られてしまいました。トップに出るチャンスも1度あったのですが、あのペースですと太刀打ち出来なかったというのが正直な気持ちです。また次、頑張ります」
「全体的には良かったと思います。走り始めはヤバいと思っていましたが、走行を重ねる毎に良くなっていって、最初のスティントでは作戦通りトップまで行けたので、そこで野尻選手にバトンタッチしました。トップの車両は給油時間が短かったので、それで前に出られてしまいました。更にペースも速かったので、その辺は次回に向けて頑張って行きたいです」
朝から天候も良く、マレーシア特有のスコールは走り出しから一度も無く決勝を迎えた。
スタートドライバーは大津弘樹選手。スタートは順位をキープしながら1コーナーへ入っていったが、中断で接触があり、12番手までポジションアップ。
安定したペースで走っていたが、ペースが上がらなくなり、10周目までに14番手までポジションを落としてしまう。
20周目からルーティンのピットインを行う車両が出始めた。大津選手は他車のピットインにより、一時は3番手を走行。1分56-57秒台の安定したペースで周回を重ねた。
31周目にピットインを行い、佐藤蓮選手に交代、13番手でコースに復帰する。佐藤選手は39周目に自己ベストを更新し、トップグループと同等のラップタイムで前車を追う。
43周目には1つポジションを上げる事に成功し12番手。ポイント圏内の10番手までは約5秒差まで迫ってきたが、残り周回がなく、12番手でレースを終えてしまった。今回は走り出しのバランスは良かったが、途中から流れを逃してしまったので、中盤戦に突入する次回から何とか挽回していきたい。
「なかなか結果が出なくて、応援して下さっている人たちに申し訳ないです。しかし、車が持っている速さや、ドライバーの速さが欠落している訳ではないので、絶対に挽回して、選手権争いに加わって行きたいです」
「走り出しの調子は良かっただけに、今回の結果は残念だね。タイヤの使い方が難しかったというのもあるけど、車もドライバーも勝てるポテンシャルを持っているので、それを生かせるようにしていきたいね。次、頑張ります」
「系統の違うコンパウンドのタイヤを持ち込んだのですが、そのタイヤの使い方が週末を通して上手く出来なかったのが敗因ですね。終盤はペースも良かったので、もっと早くそれを出す事が出来て、予選上位を得られるように持ってかないといけませんね。次回に向けて準備していきます」
「ハードタイヤを装着していた事もあって、序盤厳しいかと思っていたのですが、少しずつ順位を上げられてポジションをキープする事も出来たのですが、路面温度に対してタイヤが硬かったので、ピックアップの影響もあり、なかなかペースを上げる事が出来ず、思うような走りが出来なかったのが悔しいですね。蓮もペースが良かったのですが、抜くほどのペースではなかったので予選、決勝と、もっとペースを上げて行く必要があると思っています」
「後半のスティントを担当しましたが、ピットアウトした後はそのあとのペースは良かったと思っています。追い上げて行く事は出来たのですが、1台を抜くにとどまり、集団の後ろに入ってしまうと、なかなかオーバーテイクにつながらなかったので、レースに強い車を作り上げていく必要があると感じました。予選、決勝を通してもう一度一から見直して、頑張りたいと思います」
鈴木亜久里監督のコメント
「木曜のフリー走行の結果では上位に行けないのではないかと心配したけど、ドライバーもチームも頑張ってここまで這い上がってきてくれた。松下も不調なのかと心配したけど、そんな心配は必要ないくらいのパフォーマンスを最後に見せてくれたので、明日はしっかりと結果が残せるように戦って行きたいね」